暖簾分け
前田 隆行
『100BLG』立ち上げメンバーである前田隆行、徳田雄人、猿渡進平、河野禎之、平田知弘が一堂に会し、『100BLG』の発足についてそれぞれの想いを語りました。
※(取材は町田市にある「DAYS BLG!」にて)
— この回では、前田の「DAYS BLG!」の立ち上げまでと、大切にしてきた思いを中心にお伝えしていきます。
前田 僕は介護の現場一筋でやってきました。大事にしてきたこと……「本人の思いをどうカタチにできるか」ということ。その想いは、社会福祉法人に勤めていたときも一貫してあって。認知症の方々のしたいことに耳を傾け続けてきました。
そのなかのおひとりが「働きたい」と言っていて。もう10年以上前になるでしょうか。その方の思いをなんとか実現しようと、試行錯誤を繰り返して。ベテラン職員に猛反対にあって、半数が辞めていったり、そりゃあもういろんなことがありましたよ。だけどそんなときも、本人の発する言葉に勇気をもらえたんです。自分のやっていることが間違ってないんだって、信じることができたんですよね。
2012年に独立して、東京・町田で「DAYS BLG!」を立ち上げて、企業のHONDAさんとつながって。洗車の仕事に対して謝礼をもらって。 だけど、ここまで来て、仕事を見つけることに一生懸命だったということに気づきました。
この間、「DAYS BLG!」のメンバーさんに言われたんですよね。
「俺は洗車がやりたいからここに来てるわけじゃない。一緒にいる仲間がいるから、俺も行くんだ」
仲間と一緒に活動すること、仲間と過ごす時間に価値があるということを教えられました。最近は仲間意識をどうつくっていくのか、ということに重点を移しているところです。 認知症を受容し、弱いところを見せ合えるメンバーがいる。失敗しても許される場、素の自分を見せられる場所だということが、「DAYS BLG!」の空気感をつくっているんだと思います。
平田 僕もここにいると素の自分でいられる。とっても楽になるんです。
徳田 誰もがふっと入っていけるのは、そういうことかもしれませんね。ただ、町田だからできる、前田さんだからできる、と思われるのは避けたいんですよね。 たしかに「名人芸」なところがある。たとえば、前田さんがラーメン屋の店主だとして、「この人しか出せないスープ」だと暖簾分けが難しいじゃないですか。だけど、このスープのコクを、風味を、100か所に広げていきたいんですよね。
前田 ラーメン屋……。頑固一徹なつもりはないんだけどねえ。
確かに、町田があるからいいってなってしまうとそこで完結してしまいますよね。隣接する八王子や相模原、横浜、川崎、大和は? ……それだけじゃなくて関西、日本全国で見たらどうなんだ? って。
先日、新潟に住む認知症の方から連絡が来たんです。「新幹線で通いたい」と。たとえお金の問題をクリアできても、それは違うなと。住んでいる地域に「DAYS BLG!」のような場があればいいわけですよね。近隣の相模原からもここに来たいと言う方が多い。そういう方は全国にたくさんいるんです。 わたしひとりだと、広げることはできない。けれど、ここにそろった5人の仲間が一緒にいれば、思いをカタチにできるんじゃないかと。
さまざまなバックグラウンドを持った仲間と一緒に、「暖簾分け」やってやろう! と、このスープの味を伝えるためには? を研究しているところです。
takayuki maeda
- 『100BLG』の取締役
- DAYS BLG!代表
- NPO町田市つながりの開理事長
- 特定非営利活動法人若年認知症サポートセンター理事
- 特定非営利活動法人認知症フレンドシップクラブアドバイザリーボード
- 一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ理事
1976年、神奈川県生まれ。江戸川学園江戸川大学社会学部卒。老年精神科ソーシャルワーカー、在宅介護支援センター、第三セクターのE型デイサービス、木之下徹Dr.の元で認知症当事者ネットワークづくりなどを経て、現職。また世界認知症若手専門家グループ(World Young Leaders in Dementia)の一員。